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【空飛ぶ広報室】航空自衛隊の中の人

空飛ぶ広報室(有川浩)

 F-15のパイロットだった空井大祐二尉は、ブルーインパルスの内示が出た数日後に、横断歩道で信号待ちをしていたところをトラックに突っ込まれ、全治三ヶ月の重傷を負ってしまう。日常生活に支障がない状態までは完治したものの、膝の半月板が損傷し、パイロットとしてはクビになってしまう。




書評


評価:☆☆☆☆☆

 F-15のパイロットだった空井大祐二尉は、ブルーインパルスの内示が出た数日後に、横断歩道で信号待ちをしていたところをトラックに突っ込まれ、全治三ヶ月の重傷を負ってしまう。日常生活に支障がない状態までは完治したものの、膝の半月板が損傷し、パイロットとしてはクビになってしまう。
 それでも貼り付けたような笑顔のまま、仕方ないと受け入れた彼を心配する上層部が送り込んだ先は、航空幕僚監部広報室だった。室長の鷺坂正司一佐に、帝都テレビのディレクター稲葉リカに引き合わされた空井大祐二尉は、彼女がパイロットを人殺しと暴言を吐くのを聞き、思わず怒鳴り返してしまう。それは彼が事故後に初めて感情を爆発させた瞬間だった。

 元々、新人事件記者として、取材対象に強引な手法で対して来た稲葉リカも、入社三年、馬鹿にしていた同僚たちに追い抜かれ、腫れ物扱いで報道に回されてきた人材だ。彼女は取材対象も人間であることを空井の爆発で初めて実感し、取材者として新たな一歩を歩み始める。
 その企画として彼女が立ち上げたのが、航空自衛隊を広報する広報室のドキュメンタリー取材をすることだった。空井大祐二尉を担当としながら、過去の経験が元で無駄美人となった柚木典子三佐、風紀委員の様な槙博巳三佐、猪突猛進体育会系の片山和宣一尉、個人的信条で昇任試験を受けない報道一筋の比嘉哲広一曹ら、広報室にいる“人間”に着目することで、今までいかに自衛隊を“モノ”として扱ってきたのか、そのことを自覚させられてしまう。

 自衛隊広報作家の面目躍如とも言うべき作品で、広報室にいる人という視点から航空自衛隊を描いている。最後に、東日本大震災の時の松島の様子を、松島基地に転属になった空井大祐二尉を通じて語る短編も収録している。
 またまたいつものように大甘展開かと思ったのだが、甘さは要素として含みつつも、あくまで自衛官という人間にスポットを当てることを忘れない、節度ある作品になっていると思う。


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