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【スタート・アゲイン 上】まずは認めることからはじまる

スタート・アゲイン 上(石川ヨナ)

 アーグレシア大陸の覇権国家ギルシテに暮らす少女、ラフィア・ムラルグの父は、戦死して英雄となった。でも、英雄となるよりも、隣にいて自分に微笑みかけて欲しかった。そう思うラフィアは、国民皆徴兵制が敷かれるギルシテにあっては異端だ。しかし皮肉なことに、ラフィアの軍事的才能は卓抜している。



書評


評価:☆☆☆☆

 アーグレシア大陸の覇権国家ギルシテに暮らす少女、ラフィア・ムラルグの父は、戦死して英雄となった。でも、英雄となるよりも、隣にいて自分に微笑みかけて欲しかった。そう思うラフィアは、国民皆徴兵制が敷かれるギルシテにあっては異端だ。しかし皮肉なことに、ラフィアの軍事的才能は卓抜している。
 そんな鬱屈した思いを抱えながらも、流されるままに日常を生き、学校で軍事を学び続けていたラフィアだったが、ある日、骨董屋でひとつの宝石を手に入れたことで運命が捻じ曲がる。その石は、ヴァルーガという強力な悪魔を使役するための契約の石であり、知らずにそれを身につけたラフィアは、呼び寄せられたヴァルーガによって、首都ハムザルドを壊滅状態に追い込んでしまう。

 ギルシテの大将軍であり実質的指導者であるガザーロ・エルジーマは、考古学者のザイゴ・ファルモンドから、魔石ジスの能力と、ラフィアとヴァルーガの契約関係を知らされ、それをギルシテ再興の狼煙として利用することを思いつく。
 そのガザーロの思惑に従うことが出来なかったラフィアは、ギルシテを出奔、ヴァルーガに教えられた、人間の愚かさの根源である魂の穴を塞ぐ方法を求め、造り主を探そうと決意するのだった。


 自分たちが豊かで居続けるために周辺諸国を虐げ、その悲しみの上に築かれる繁栄に、上手く表現できないモヤモヤを抱えて生きてきたラフィアは、ヴァルーガという超常の存在によって流れるままに外へ連れ出され、そして初めて、思想の自由を知る。
 そうして知った、彼女の理想を実現する方法なのだが、それを実行するために人とのつながりを完全に断てるほど、彼女の精神は成熟してはいなかった。たまたま会った青年に優しくされ、そこで彼女がかつて失ってしまった肉親のぬくもりを思い出してしまうことで、彼女がギルシテに捨ててきたはずの、憎悪の連鎖の渦中に再び叩き込まれてしまうのだ。

 人間がいつまでも戦争をやめられない理由を、造り主を忘れたことに起因する魂の穴に求め、それを埋めることで人間は平和に暮らせるという思想の下、そうはできないラフィアの葛藤を描く物語といえる。物質の世界は思うままに操れる悪魔ヴァルーガを付き従えながらも、それを超えた精神の世界に根源がある限り、彼女にはどうすることもできない。


 個人的に、構成上、どうしても納得できないのは、なぜガザーロ将軍は、ラフィアを殺すことでヴァルーガを霧散させるという作戦を選ばなかったのかということだ。魔石ジスの親石を持つラフィアが死ねば、子石を持つヴァルーガは霧散して、再び親石の持ち主が現れるまで復活しない。そのことを知ったにも拘らず、ガザーロは衆人環視の前でヴァルーガを砲撃し、ラフィアにヴァルーガの死を命じさせることで、ギルシテ軍の戦意高揚につなげようとする。
 この作戦の肝となるのは、ラフィアの意思だ。彼女が拒否したら、それだけで破綻する。それなのに、彼女の素性を事前に詳しく調べることもなく、それを利用して洗脳しようという考えも見られない。ただ戦場に彼女を同伴し、いきなりヴァルーガ自害を命じるのだ。それは上手くいくはずもない。

 普通に考えたら、ラフィアの存在は極力隠し、ヴァルーガ攻撃までは同じ方法を取るにしても、同時に密室でラフィアを抹殺することでヴァルーガを霧散させればよい。そうすればラフィアの意志など忖度する必要もない。そしてそのやり方こそが、ギルシテの国是ではなかろうか。
 ただここで、魂の穴の存在が人間から他者の異なる考えを読み取る能力を奪い、ガザーロに、ラフィアが拒否する可能性を考えさせなかったという解釈も出来なくもない。しかしそれは、いかにも苦しい。


 それはともかく、ラフィアは自身も奈落のそこに一度落ちることで、人間が持つ罪を自分のものとして自覚した。そこから再び抜け出し、根本的な解決に向かって進めるのか?それは下巻で明らかになるのだろう。

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2011-11-13 07:45 │ from URL

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